「砂糖と健康」研究会

Column2 /

砂糖と脳の関係、知っている?①
~砂糖が脳にもたらすもの~

甘くておいしい砂糖は身体のエネルギー源となり、その20%をわずか体重の2%の脳が消費します[1]。また、砂糖には食べると「ほっ」と心が落ち着くリラックス効果もありますが、このとき脳では一体どのようなことが起こっているのでしょうか。

まず「甘い」という感覚は甘味受容体で感知されますが、甘味受容体は舌だけではなく消化管など体全体に偏在していて[2]、「甘い」という感覚を味覚神経を通じて脳に届けます[3]。また「おいしさ」は神経系に加え、脳内物質が大きく関与します[4]。脳内物質はその構造によって「おいしい」と思うことに関係するものや、「もっと食べたい」と思うことに関係するものが存在します。砂糖を食べると舌から神経を通じて脳に届き、脳内物質も関与することで嗜好性と摂取意欲が生じるのです[5]

砂糖はブドウ糖(グルコース)の形で脳の血管に入り[1]、グリア細胞により取り込まれ、エネルギーに変換されることで神経細胞(ニューロン)を活性化させます[6]。それが直接関与しているかは今後の研究が必要ですが、ブドウ糖や砂糖を摂取した人では記憶機能が改善したり[6]、向社会的行動が増加したという報告があります[7]

また、砂糖を食べるとインスリンというホルモンが体内で分泌されますが、これは血糖値を下げる他に、トリプトファンというアミノ酸が脳に取り込まれやすくする働きをします。脳に取り込まれたトリプトファンは「幸せホルモン」とも呼ばれるセロトニンに変換され、これによって砂糖を食べることによるリラックス効果が生まれます。この効果を得るためには、タンパク質や脂肪を含むお菓子ではなく、純粋な炭水化物として1日30~40g摂る必要があるとも報告されています。また、セロトニンはリラックス効果だけでなく満足感を得ることにより過食を抑えることができるので、セロトニンを生み出す砂糖はダイエットやメンタルヘルスにも良いと言えます[8]

最後に、甘味を示す成分は、砂糖や甘味料だけでなくアミノ酸なども含まれます[9]。ここまでに述べた砂糖と脳の関係は甘味に共通のものなのか、砂糖だけのものなのかはさらなる研究が必要です。

  • ※  グリア細胞:神経系を構成する細胞のうち、神経細胞(ニューロン)以外の細胞の総称
  • [1]  Mergenthaler P. et al. Sugar for the brain: the role of glucose in physiological and pathological brain function. Trends Neurosci. 36 (10), 587-597 (2013)
  • [2]  Lee AA. et al. Sugars, Sweet Taste Receptors, and Brain Responses. Nutrients. 9 (7), 653 (2017)
  • [3]  von Molitor E et al. Sweet Taste Is Complex: Signaling Cascades and Circuits Involved in Sweet Sensation. Front Hum Neurosci. 15, 667709 (2021)
  • [4]  山本隆 糖の甘さとおいしさの脳機構. 『糖質と健康』 ILSI JAPAN 糖類研究部会(編), G. Harvey Anderson, 木村修一, 足立堯(監修)建帛社 (2003) pp.11-19.
  • [5]  Yamamoto T. Brain Mechanisms of Sweetness and Palatability of Sugars. Nutr Rev. 61 (5 Pt 2), S5-9 (2003)
  • [6]  Takada A. et al. Roles of Glucose and Sucrose Intakes on the Brain Functions Measured by the Working Ability and Morris Maze. Psychology and Pathophysiological Outcomes of Eating; Takada A. and Himmerich H., Ed.; IntechOpen (2021) DOI: 10.5772/intechopen.99203
  • [7]  Schaefer M. et al. Experiencing sweet taste is associated with an increase in prosocial behavior. Sci Rep. 13 (1), 1954 (2023)
  • [8]  Rita Tsay 砂糖と心の健康. 『砂糖と健康の科学』 砂糖を科学する会(編), 高田明和(監修)社団法人糖業協会, 精糖工業会, 砂糖を科学する会 (2002) pp. 126-133
  • [9]  Kohno D. Sweet taste receptor in the hypothalamus: a potential new player in glucose sensing in the hypothalamus. J Physiol Sci. 67 (4), 459-465 (2017)

本コラムは、精糖工業会「砂糖と健康」研究会が関連する論文や資料を調査し、その内容をもとに作成したものです。参考とした論文の概要は、以下のPDFよりご覧いただけます。

プロジェクト資料の閲覧にはAdobe Acrobat Reader等の
ソフトウェアをご利用ください。

pagetop