砂糖は塩に比べて水にとても溶けやすいというのはみなさん経験上ご存知のことと思います。では、実際にはどれくらいの量が溶けるのでしょうか? なんと常温でも水の質量の約2倍、100度の水では5倍近くの砂糖が溶けます。
その理由は砂糖と水の分子構造にあります。どちらも酸素分子と水素分子が結びついた構造を持ち、これらがお互いに簡単に結びつくため、砂糖は水に溶けやすい(結びつきやすい)のです。水に溶けやすい性質『親水性』は調理のさまざまな場面で活用されています。
水100gあたりに溶ける砂糖の量
(理科年表に基づき作成)
温度 | 0℃ | 20℃ | 40℃ | 60℃ | 80℃ | 100℃ |
---|---|---|---|---|---|---|
砂糖 | 179g | 204g | 238g | 287g | 362g | 487g |
肉を煮ると柔らかくなるのは肉のコラーゲンが水に溶けるからです。そのため、ビーフシチューを作るときなどに、砂糖をもみこんでおくと砂糖が肉の組織に入り込んで水を引きつけ、コラーゲンが溶け出しやすくなって柔らかく煮ることができます。焼肉やすき焼きなど、焼いた場合でも同様の効果があります。
メレンゲや生クリームを泡立てても、しばらく放置すると液状に戻ってしまうのは、泡を形作る卵白のタンパク質が分離された水を引きつけてしまうためです。砂糖を加えて泡立てると砂糖が水分と結びついて離れなくなり、しっかりと泡が立って安定します。
ご飯の主成分であるデンプンは、水を加えて熱すると柔らかく粘り気のある状態になりますが、放置するとデンプンの分子が水を仲介にして集まり、固くなってしまいます。砂糖を加えることで砂糖が水を抱え込んでデンプンの分子を集まりにくくするため、粘り気のある状態を保つことができます。
卵焼きなどに砂糖を加えると、砂糖が卵のタンパク質の水分を抱え込んで、固くなるのを防ぎます。卵の固まる温度が高くなり、ゆるやかに固まるため、しっかり加熱しても柔らかく仕上がります。プリンがなめらかに仕上がるのも同じ理由です。
ジャムやマーマレードは、素材に砂糖を加えて加熱するだけで簡単にできます。果物や野菜に含まれるペクチンは、水によって柔らかくなります。砂糖はペクチンが水を抱えるのを助け、抱えた後も、外へしみだすことを防ぎます。この働きによって果実や野菜はゼリー状になるのです。