お菓子づくりや料理において、砂糖は単に甘味を加えるだけでなく、さまざまな役割を担っています。レシピを見て「なぜここで砂糖を使うのかしら?」と疑問に感じたことはありませんか。そこには砂糖の持つ性質、特性を利用した科学的な根拠があるのです。
料理をより豊かに、より美味しくする砂糖のチカラをご覧ください。
カビや細菌が繁殖するためには水が必要ですが、砂糖を一定量使用すると、食品中の水分を砂糖が抱え込むため、カビなどが繁殖しにくくなります。そのため砂糖をしっかり使ったあんこは日持ちがします。
バターを使用したクッキーなどは、時間が経つと、バターの油と空気中の酸素が結合していやな臭いがすることがあります。砂糖を加えると、油の水分が砂糖と結びつくため、酸素と結合しにくくなり、これを防ぐことができます。
パンやクッキー、カステラなどの焼き色は、小麦粉、牛乳、卵などに含まれるアミノ酸と糖が反応してできます。この反応をメイラード反応といいます。
パンをつくるときには酵母を使います。酵母は糖を栄養源にして発酵し、それによってできる炭酸ガスで生地が膨らみます。小麦粉にも糖質が含まれていますが、砂糖を加えることでさらに発酵しやすくなるのです。砂糖を加えて寝かせたパンは、砂糖を加えなかった場合と比べて2~2.5倍程度大きく、ふっくらと仕上がります。
砂糖の持つ強い甘味は食材の生臭さや苦み、酸味といった雑味を和らげ、食べやすくする効果があります。肉や魚の煮物に砂糖を入れたり、甘酢やコーヒーに砂糖を入れるのはこのためです。
煮豆を煮るとき、一度に砂糖を入れず、何回かに分けて入れると柔らかく仕上がります。豆は、外側の液の濃度によって水分の移動の仕方が異なり、外側の液が薄い場合は、水分が中に入っていきますが、外側の液が濃い場合は、水分が外に出ていってしまいます。砂糖を一度に投入すると外側の液の方が濃くなり、豆の水分が外に出てしまい、固くなってしまいます。
果実酒を作るとき、砂糖を入れると果実の外側の液が濃くなり、果実のエキスが溶け出しやすくなります。一般的な白砂糖ではなく、氷砂糖を使うのは、結晶の大きな氷砂糖は徐々に溶けていくので、先にアルコールが果実に染み込み、その後果実のエキスがゆっくり染み出して、まろやかな仕上がりになるからです。