令和5年1月4日

令和5年 新春のご挨拶

会長新春のご挨拶

会長新春のご挨拶

謹んで新年のお慶びを申し上げます。

日頃は弊会に格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。

まず、私どもの製品をご愛顧いただいている消費者・ユーザーの皆様に心より御礼申し上げます。

特約店様を初めとする流通関係の皆様には、コロナ禍の中で引き続きご苦労をおかけしております。このような厳しい環境下においても、日々懸命に製品の安定供給にご尽力頂いておりますことに対し、この場を借りて、改めて深く感謝申し上げます。

さて、令和3(2021)砂糖年度は、オミクロン株による感染急拡大など、引き続き新型コロナウイルスの影響を受ける一方で、行動制限の解除や外国人の入国制限の緩和などによる経済活動の活性化により、後半から徐々に需要が回復し、消費量は前年度を上回る174万6千トンとなりました。今年度、2022砂糖年度の消費量は175万トンと見込まれています。

とはいえ、コロナ禍で落ち込んだ11万トン以上の需要回復には未だ程遠い状況であり、その上、昨年はウクライナ問題に端を発する粗糖国際相場の高止まりや、輸送費や燃油価格の上昇、更には急激な円安も重なって、精製糖業の経営に係るサプライチェーン全体のコストが大幅に上昇しております。その結果、各社とも度重なる製品価格の改定を余儀なくされており、新型コロナの感染再拡大の不安とともに、依然、状況は非常に厳しいものがあります。

私ども精製糖業は、バリューチェーンの中間に位置する基幹産業として、国民生活に不可欠で、心身のエネルギー源となる砂糖製品を安定的に提供するとともに、糖価調整制度の下で調整金負担等を通じて、地域経済・国内農業振興の重要な担い手としての役割を果たし、沖縄県及び鹿児島県の離島・国境防衛政策、さとうきび・てん菜栽培を通じた地球環境問題にも貢献してまいりました。

しかしながら、長年にわたる砂糖消費の大きな落ち込みにより、1989(平成元年)砂糖年度に257万トンあった砂糖の需要量は、30数年間で3分の2まで減少しています。この結果、輸入糖は、当時の約170万トンから、ほぼ100万トンにまで減少しております。その中で、今回の経営全体のコスト高は企業経営を直撃し、消費量の大幅減少による損益分岐点の上昇、設備の老朽化による更新投資への備えも必要となる中、収益が大きく圧迫されております。

元来、巨大な装置産業である砂糖産業においては、一定以上の稼働率を確保し、持続的に再投資可能な事業体として経営することが、経営者の使命です。従来の各社の枠組みに加え、昨今、資本系列の枠を超えた経営統合等で業界再編を図るなど、抜本的な改革を進めております。

また、砂糖調整金勘定は昨今も収支は急速に悪化し、2021砂糖年度は、単年度でも112億円の赤字となり、年度末の累積差損は448億円という由々しき事態になっております。

このような深刻な状況の背景には、輸入糖のみに過度な負担を強いる糖価調整制度運営の「不公平・不公正」があり、制度疲労が顕在化しております。輸入糖のみに調整金の負担を負わせることで、砂糖の価格を上昇させ、消費者の皆様やユーザー様から敬遠されて、更に、消費が減少するという、「負のスパイラル」を引き起こしております。弊会としては、この是正に向け、農林水産省に対し強く要請してまいりました。

この中で、「国内産糖と輸入糖の供給アンバランスの解消」について、糖価調整制度の調整金の単年度収支が黒字化するよう、農林水産省は、てん菜糖の交付対象数量について段階的に削減し、2026砂糖年度は現行の64万トンから9万トン減の55万トンにすることを決定しました。今後の進捗を注視する必要はありますが、弊会としても今回の決定は率直に評価するところです。

しかしながら、今回の対応は、調整金の多額の累積差損は単年度収支が黒字化するまでの間、更に拡大する見込みとなっており、抜本的な解決には至っておりません。糖価調整制度の運営の「不公平・不公正」の解消に向け、引き続き、以下に取り組むことが課題と認識しております。

一つは、輸入糖、異性化糖、加糖調製品の調整金負担の「公平性」の確保です。砂糖に対する両者の不当な価格優位性は、砂糖需要が減少する大きな一因です。

異性化糖については、甘味の需要量の4分の1を占めているにもかかわらず、10年以上、調整金が徴収されておりません。農林水産省も、2020年以降、品質格差係数の改定や二次調整金の算出方法の見直しを行っておりますが、「不公平・不公正」の是正に寄与しているとは言い難く、公平な競争を確保するため、実効性のある是正が図られなければなりません。

加糖調製品については、関税の一部を調整金に置き換えるという措置が講じられることになり、2022砂糖年度の軽減措置は、調整金収入の大幅な増加に伴い、キログラム当たり3.0円から3.9円に拡大する決定がなされております。今後とも暫定税率の引下げに伴う調整金収入の拡大に伴い、制度の趣旨に沿って、国産の砂糖への支援に着実に充当していくことが重要であります。更に、こうした方策だけでは、砂糖との価格差を埋めるには不十分であり、原料原産地表示の施行に伴う国産の砂糖への切替えや菓子類の輸出拡大等、あらゆる施策を講じていく必要があります。

もう一つは、国内生産者及び国内産糖事業者への支援における国庫負担の拡充です。糖価調整制度は国策であり、鹿児島県・沖縄県のさとうきびや北海道のてん菜といった甘味資源作物は、国家の重要品目です。食料安全保障、国境防衛や離島振興という観点からも、砂糖消費が減少して縮小する精製糖企業からの調整金に過度に依存するのではなく、税負担の公平・公正性を図るためにも、国庫負担を引き上げるべきです。

砂糖産業は、さとうきび、てん菜の生産のみならず、精製糖業、甘しゃ糖業、ビート糖業、流通業者の全体が存在して成立しているものであり、運命共同体と言えます。砂糖をめぐる極めて厳しい状況について、政府及び砂糖業界の全ての関係者が直視し、個別の利害を超えてコンセンサスと相互理解、公平な負担の下、必要な対策を講じることが急務であります。

弊会としても、公平・公正な糖価調整制度の運営によって砂糖の需要が回復して砂糖業界全体が発展し、関係者の皆様の日々のご努力が報われますよう、全力で取り組んでまいります。

引き続きのご理解・ご協力を何卒よろしくお願いいたします。

最後に、皆様のご発展とご多幸をお祈りするとともに、新型コロナウイルス感染症の収束を心から祈念申し上げて新年のご挨拶といたします。

令和5年 元旦

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